人手不足対策について
企業の成長と発展を阻害する最も喫緊の課題の一つが人手不足です。少子高齢化が進む日本において、この問題は年々深刻さを増しています。特に福岡市のような地方都市でも、その影響は顕著に現れています。
私は福岡市で「株式会社主体的なキャリア形成」を経営するキャリアコンサルタントの平野裕一と申します。これまで多くの企業や個人のキャリア支援に携わってきましたが、最近は人手不足に関するご相談が非常に増えています。
この度、人手不足対策について、私の経験と視点から記事を執筆させていただくことになりました。人手不足は単なる採用の問題ではなく、企業全体の構造、社員一人ひとりのキャリア意識、そして企業文化に深く根ざした問題です。本稿が、人手不足に悩む企業の皆様にとって、具体的な解決策を見つける一助となれば幸いです。
Contents
人手不足の現状と企業が直面する課題
1.なぜ人手不足が深刻化しているのか
人手不足の背景には、様々な要因が複雑に絡み合っています。
- 少子高齢化による労働人口の減少: 日本の人口構造は逆ピラミッド型に変化しており、生産年齢人口(15歳〜64歳)は減少の一途を辿っています。これは、採用市場における競争を激化させる最大の要因です。
- 若年層の労働観の変化: 終身雇用制度が崩壊し、転職が当たり前になった現代において、若年層は企業選びにおいて、給与だけでなく、ワークライフバランス、企業文化、成長機会、社会貢献性など、多岐にわたる要素を重視するようになりました。
- デジタル化への対応の遅れ: 特に中小企業では、デジタル技術の導入が遅れており、業務効率化や生産性向上に繋がっていません。結果として、限られた人員で多くの業務をこなさなければならず、既存社員への負担が増大しています。
- 採用手法の多様化と複雑化: インターネットの普及により、求人媒体の種類が増え、SNSを活用した採用なども登場しています。しかし、その一方で、どの媒体を使えば効果的なのか、どのように情報発信すれば良いのか、企業の採用担当者が迷うケースも少なくありません。
- 外国人労働者の受け入れ体制の未整備: 人手不足を補う手段として外国人労働者の活用が注目されていますが、受け入れ企業側のノウハウ不足や、生活・文化への配慮が十分でないケースも見受けられます。
2.人手不足が企業にもたらす影響
人手不足は、企業経営に多方面で深刻な影響を及ぼします。
- 売上・利益の減少: 必要な人員が確保できないため、受注機会の損失や生産能力の低下を招き、結果として売上や利益が減少します。
- 既存社員の負担増大と離職率の上昇: 人員が不足すると、既存社員一人あたりの業務量が増加します。これにより、長時間労働や過度なストレスが生じ、社員のモチベーション低下や疲弊を招き、最終的には離職に繋がる可能性が高まります。
- サービスの質の低下: 顧客対応や商品提供の質が低下し、顧客満足度の低下や企業イメージの悪化に繋がりかねません。
- 新規事業への着手困難: 人手不足により、現状維持で精一杯となり、新しい事業やサービスへの投資、挑戦が困難になります。これは企業の成長機会の損失を意味します。
- 技術・ノウハウの伝承の困難: ベテラン社員の退職が進む一方で、若手社員の採用が進まない場合、長年培ってきた技術やノウハウが失われるリスクが生じます。
平野裕一が提言する人手不足対策:採用から定着、そして成長へ
人手不足対策は、単に「人を採用する」という短期的な視点だけでなく、「採用した人が定着し、成長できる環境を整える」という長期的な視点と、企業文化全体の変革が不可欠です。ここでは、私の考える具体的な対策を3つのフェーズに分けて解説します。
フェーズ1:採用力の強化と新たな人材確保
採用市場が厳しい現在、従来の採用手法に固執するだけでは、優秀な人材を獲得することは困難です。
1.採用戦略の見直しと明確化
- 採用ペルソナの具体化: どんな人材が欲しいのかを漠然と考えるのではなく、年齢、スキル、経験、志向、価値観など、具体的な人物像(ペルソナ)を設定します。これにより、求人情報の内容やアプローチ方法が明確になります。
- 企業の魅力の再発見と発信: 給与や福利厚生だけでなく、企業の理念、ビジョン、企業文化、仕事の面白さ、やりがい、社員の成長機会など、他社にはない魅力を洗い出し、積極的に発信します。特に、社員の声や働く様子を具体的に伝えることで、求職者とのミスマッチを防ぎます。
- 多様な採用チャネルの活用: 従来の求人媒体だけでなく、SNS(LinkedIn、Facebook、Xなど)、社員紹介(リファラル採用)、Webサイト、採用イベント、地域イベントへの参加など、多様なチャネルを複合的に活用します。
- ターゲット層に合わせたアプローチ: 若年層にはSNSや動画コンテンツ、ベテラン層には専門性の高い求人サイトやセミナーなど、ターゲット層が利用するチャネルや情報収集方法に合わせたアプローチが重要です。
2.採用プロセスの改善
- スピーディな選考: 優秀な人材は複数の企業から声がかかっていることが多いため、選考プロセスをスピーディーに進めることが重要です。一次面接から内定まで、できる限り迅速に対応することで、他社に取られるリスクを減らします。
- 候補者体験の向上: 応募者一人ひとりに対して、丁寧かつ迅速な対応を心がけます。不採用の場合でも、感謝の気持ちを伝えるなど、企業の印象を良くすることで、将来的な応募や口コミに繋がる可能性もあります。
- オンライン面接の活用: 遠隔地の候補者や、多忙な候補者に対しても柔軟に対応できるよう、オンライン面接を積極的に導入します。
3.新たな人材の獲得
- 未経験者・若手人材の採用と育成: 経験者採用が難しい場合は、ポテンシャルを重視した未経験者や若手人材の採用に目を向けます。入社後のOJTや研修制度を充実させ、着実に育成する体制を構築します。
- シニア人材の活用: 長年の経験と知識を持つシニア人材は、企業にとって貴重な戦力となります。定年延長や再雇用制度の拡充、短時間勤務など、柔軟な働き方を提案し、シニア人材が活躍できる場を提供します。
- 外国人材の積極的な採用: 日本語能力や専門スキルを持つ外国人材は、人手不足解消だけでなく、企業のグローバル化にも貢献します。しかし、単に採用するだけでなく、生活面や文化面でのサポート体制を整えることが重要です。
- 副業・兼業人材の活用: 専門性の高い業務や期間限定のプロジェクトなどにおいて、副業・兼業人材を活用するのも有効な手段です。多様な働き方を許容することで、企業の柔軟性を高めます。
フェーズ2:定着率の向上とエンゲージメント強化
せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまっては意味がありません。社員が長く働き続けたいと思える環境を整えることが、人手不足対策の要となります。
1.働きがいのある職場環境の整備
- ワークライフバランスの推進: フレックスタイム制度、テレワーク、育児・介護休業制度の拡充など、社員一人ひとりのライフスタイルに合わせた多様な働き方を推進します。残業時間の削減や有給休暇の取得促進も重要です。
- 公正な評価制度と報酬体系: 社員の頑張りや成果が正当に評価され、それが報酬に反映される仕組みを構築します。評価基準を明確にし、社員が納得感を持って働ける環境を整えます。
- コミュニケーションの活性化: 定期的な1on1ミーティング、社内イベント、メンター制度などを導入し、社員間のコミュニケーションを活発化させます。上司と部下、同僚間の信頼関係を築くことで、心理的安全性の高い職場を実現します。
- ハラスメント対策の徹底: パワハラ、セクハラなど、あらゆるハラスメントを許さない企業文化を醸成し、相談窓口の設置や研修などを通じて、社員が安心して働ける環境を確保します。
2.キャリア形成支援と自己成長の促進
- 明確なキャリアパスの提示: 社員が将来のキャリアを具体的にイメージできるよう、昇進・昇格の基準や、異動・部署異動の可能性など、明確なキャリアパスを提示します。
- 教育研修制度の充実: 新入社員研修はもちろんのこと、中堅社員、管理職向けの研修、eラーニング、資格取得支援など、社員のスキルアップや自己成長を支援する制度を充実させます。個々のキャリアプランに合わせた研修の提供も効果的です。
- 自己啓発の支援: 業務に直接関係しない分野でも、社員が自律的に学習する意欲を尊重し、費用補助や情報提供などの形で支援します。
- メンター制度・コーチングの導入: 経験豊富な先輩社員や外部の専門家が、若手社員のキャリアや業務に関する相談に乗り、成長をサポートする制度を導入します。
3.社員のエンゲージメント向上
- 経営理念・ビジョンの浸透: 企業が何を目指し、どのような価値を提供しているのかを社員一人ひとりが理解し、共感することで、仕事へのモチベーションが高まります。
- 社員の声を聞く機会の創出: 社員アンケートや定期的な面談などを通じて、社員の意見や要望を積極的に吸い上げ、改善に繋げます。
- オープンな情報共有: 経営状況や事業計画、社内の重要事項などを社員にオープンに共有することで、社員の当事者意識を高めます。
フェーズ3:生産性向上と業務効率化
限られた人員で最大限の成果を出すためには、業務の無駄をなくし、効率化を図ることが不可欠です。
1.デジタル技術の積極的な導入
- RPA(Robotic Process Automation)の導入: 定型的な事務作業やデータ入力作業などをRPAによって自動化することで、社員はより付加価値の高い業務に集中できます。
- クラウドサービスの活用: 勤怠管理、経費精算、顧客管理(CRM)、グループウェアなど、様々な業務をクラウドサービスに移行することで、業務効率化とコスト削減を実現します。
- AIの活用: 顧客対応のチャットボット、データ分析、レコメンド機能など、AIを活用することで、業務の自動化や質の向上に繋げます。
- DX推進: デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや組織を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することで、企業全体の生産性を抜本的に向上させます。
2.業務プロセスの見直しと改善
- 業務の可視化と標準化: 各業務のプロセスを詳細に可視化し、無駄な作業や重複作業を洗い出します。そして、誰でも同じ品質で業務が行えるよう、標準化を進めます。
- ノンコア業務のアウトソーシング: 専門性が高く、社内で行うにはコストや時間がかかる業務(経理、人事、ITサポートなど)は、積極的に外部に委託することを検討します。
- 会議の効率化: 無駄な会議をなくし、会議の目的やアジェンダを明確にする、時間制限を設ける、参加者を絞るなど、会議の効率化を図ります。
3.社員のスキルアップと多能工化
- リスキリング・アップスキリング: AIやデジタル技術の導入に伴い、社員が新たなスキルを習得できるよう、リスキリング(新しいスキルを学び、異なる職種に就くこと)やアップスキリング(既存のスキルをさらに向上させること)の機会を提供します。
- 多能工化の推進: 一人の社員が複数の業務をこなせるように育成することで、急な欠員時にも対応できる体制を整え、業務の停滞を防ぎます。
未来に向けた「主体的なキャリア形成」の重要性
人手不足は、企業にとって大きな課題であると同時に、企業が変革し、成長する大きなチャンスでもあります。
私は「主体的なキャリア形成」という考え方を大切にしています。これは、企業が社員一人ひとりのキャリア自律を支援し、社員自身が自分のキャリアを主体的に考え、行動できるような環境を整えることです。社員が自身のキャリアにオーナーシップを持つことで、企業へのエンゲージメントが高まり、結果として定着率の向上、生産性の向上に繋がると確信しています。
企業ができること
- 社員の主体性を尊重する文化の醸成: 上からの指示命令だけでなく、社員自身が考え、提案し、行動できるような企業文化を育てます。
- 個人のキャリアプランと企業の成長戦略の連携: 社員一人ひとりのキャリア目標と、企業の成長戦略を紐付け、お互いがWin-Winの関係を築けるようにします。
- 失敗を恐れない挑戦を推奨: 新しいことへの挑戦を後押しし、たとえ失敗してもそれを学びとして次に活かす姿勢を評価します。
働く個人ができること
- 現状維持ではなく、常に学び続ける姿勢: 変化の激しい時代において、自分の市場価値を高めるために、常に新しい知識やスキルを習得する努力を怠らないこと。
- 自分の強みと弱みを客観的に把握: 自己分析を深め、自分の得意なこと、苦手なことを理解し、キャリアの方向性を明確にすること。
- 社内外のネットワークを構築: 異なる部署の社員や、社外の専門家との交流を通じて、多様な視点や情報を得ることで、自身のキャリアの選択肢を広げること。
まとめ
人手不足対策は、一朝一夕に解決できる問題ではありません。しかし、採用戦略の見直し、働きがいのある職場環境の整備、そしてデジタル技術を活用した生産性向上を三位一体で推進することで、着実に状況は改善していきます。
特に、福岡市の中小企業の皆様におかれましては、資金や人材の制約がある中で、どのように人手不足対策を進めていくか悩まれることも多いでしょう。しかし、DX補助金や人材開発支援助成金など、活用できる制度も多数存在します。
「株式会社主体的なキャリア形成」では、皆様の企業の人手不足解消に向けた具体的なコンサルティングや、社員のキャリア形成支援を通じて、持続可能な企業成長をサポートしています。
人手不足の課題に真摯に向き合い、未来に向けた企業変革に挑戦する皆様を、心から応援しております。
