人手不足対策!「採用コスト」を「未来の利益」に変える、人が辞めない仕組みの設計図
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採用コストを「永久投資」する経営から「人的資本の最適運用」への転換を
経営者・人事責任者の皆様、貴社の採用活動は、まるで無限に続くマラソンのように感じていませんか?
多額の費用と労力を投じても、採用と退職が繰り返される「ザルで水を汲む」悪循環。この「採用の自転車操業」は、採用市場での敗北を意味するだけでなく、企業体力の消耗、既存社員の疲弊、そして未来への投資機会の喪失という深刻な経営リスクを内包しています。
総合人材会社で10年以上にわたり大手人事部の課題解決を支援し、現在は福岡を拠点に企業の成長を後押しする私の結論は、明確です。
人手不足の解決策は、外部の「人材獲得競争」から、内部の「人材維持・活用戦略」へのシフトです。
私が提唱する「主体的なキャリア形成」を基軸としたこの設計図は、新規採用コストを劇的に削減し、その削減分を「未来の利益」を生み出す「人的資本投資」へと転換させます。この実践により、貴社の離職率を半減(-50%)させることも、絵空事ではありません。
1. 経営者が直視すべき「潜在的退職コスト」の定量化
多くの企業が見落としているのは、退職によって発生する「潜在的退職コスト」の規模です。これは、求人広告費や紹介フィーといった「顕在的コスト」を遥かに上回ります。
| 項目 | 影響度 | 経営へのインパクト |
| 生産性の空白 | 新規採用者の立ち上がり期間(3~6ヶ月)の売上機会損失 | 数百万円規模の売上機会損失 |
| 慣熟コスト | 既存社員によるOJT、引き継ぎにかかる時間とエネルギー | 残業代増加と既存社員のモチベーション低下 |
| 組織知の逸失 | 退職者固有のノウハウ、顧客関係性、業務プロセスの断絶 | 競争優位性の喪失と品質の不安定化 |
| 連鎖退職リスク | 周囲の社員の士気低下、不安増大、新たな離職予備軍の発生 | 組織全体のリスク増大 |
私の試算では、一人の社員の退職が企業に与える総損失は、その社員の年収の最低1.5倍に相当します。この出血を止めるには、社員が「自己の成長と会社の未来」を重ね合わせられる、強固な「キャリアの安全基地」を築く必要があります。
2. 【設計図の核心】「主体的なキャリア形成支援」という投資戦略
社員が会社を辞める最大の理由は、「給与」ではなく「成長機会の停滞」と「貢献実感が持てないこと」です。
「人が辞めない仕組み」とは、社員の内発的動機(成長したい、貢献したい)を会社の事業成長に直結させる、戦略的な人的資本運用モデルです。
この設計図は、以下の3つのフェーズで構成されます。
| フェーズ | 戦略的役割 | 焦点 | 目的 |
| I. 可視化 (Visibility) | 経営戦略と個人のWillの接点発見 | 「個」のポテンシャルと「組織」のニーズ | ミスマッチの解消と成長意欲の点火 |
| II. 接続 (Alignment) | 主体的な行動の奨励と評価 | 「行動」と「結果」のフィードバックループ | 貢献実感の最大化と定着率の向上 |
| III. 転換 (ROI Realization) | コストを利益へと変える | 「削減コスト」と「投資効果」 | 持続的な組織成長と競争優位性の確立 |
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3. 設計図:3つのステップで「人が辞めない仕組み」を実装する
ステップ1:キャリアパスの「多角化」と「未来予測マップ」(フェーズI)
従来のキャリアパスは「管理職一択」になりがちで、これが専門性の高い人材の離職を招いています。
- 専門職(エキスパート)キャリアパスの創設と地位向上:
- 管理職と同等の報酬体系と社内地位を持つ「エキスパート職」を制度化し、技術や専門性を追求したい社員の受け皿を作ります。
- これにより、社員は「昇進=マネジメント」という固定観念から解放され、自身の得意分野で貢献し続けられます。
- 「未来予測スキルマップ」の作成と公開:
- 単なる現在のスキル棚卸しだけでなく、「3年後、会社が新事業を立ち上げるために必要なスキル」をマップ化し、全社員に公開します。
- 社員は、このマップを見て「今、このスキルを身につければ、未来の事業の主役になれる」という具体的な動機付けを得られます。
【平野の視点】 キャリアパスは、社員の「未来へのロードマップ」です。未来が見えれば、人は留まる。曖昧さを排除し、具体的な成長の可能性を示すことが、最良の採用活動になります。
ステップ2:評価制度を「査定」から「キャリア開発契約」へ(フェーズII)
社員の主体性を最大限に引き出すためには、評価制度を「過去の審判」から「未来の約束」へと機能転換させる必要があります。
- 「Will-Can-Must」連動型MBOの徹底:
- 社員が「Will(将来やりたいこと)」を目標設定の基盤とし、これを会社の「Must(事業目標)」にどう繋げるかを上司と徹底的に議論します。
- 上司はコーチとして、社員のWillの実現がMust達成に不可欠であることを具体的に示します。
- 「成長のためのフィードバック」の規範化:
- 年2回の評価面談に加え、四半期ごとに「非査定型キャリア面談」(ノーレイティングの考え方を取り入れた対話)を実施します。
- 面談では、「この行動が、あなたの5年後のキャリアにどう繋がるか?」という長期的視点でのフィードバックを義務付けます。
- これにより、社員は「評価(点数)」ではなく、「成長(軌道)」に意識を集中させ、貢献実感が高まります。
【平野の視点】 主体性とは、命令に従うことではありません。「自分の Will が会社の Must を達成する」という確信を持つことで生まれるものです。この確信こそがエンゲージメントの源泉です。
ステップ3:「採用コスト削減ファンド」を創設し利益化(フェーズIII)
人が辞めない仕組みが定着し、離職率が低下した際に、その効果を「未来の利益」として回収します。
- 「潜在的退職コスト」の削減額の計測と公表:
- 離職率低下により「新規採用費」「新人教育費」がいくら削減できたかを具体的に定量化し、経営層に報告します。
- (例:昨対比で離職者が3名減。潜在的コスト削減額は )
- 「主体的なキャリア形成支援ファンド」の創設:
- 削減されたコストの一部(例:50%)を、「社員の自己投資支援ファンド」として積み立てます。
- 用途は、社員のWillに基づいた外部研修、資格取得費、社内副業(新規事業提案)の予算などに充当します。
- 「社内公募制度」の全社運用:
- 社員のキャリア自律を促すため、空いたポジションや新規事業の立ち上げメンバーを、まず社内公募で募ります。これにより、「転職しなくても新しい仕事に就ける」という内部移動の機会が保証されます。
【平野の視点】 経営者は、削減された採用コストを「一時的な利益」としてではなく、「未来の成長に向けた、リスクの低い内部投資」と捉えるべきです。この投資が、会社の収益構造を変えるのです。
4. 結びに:組織の変革は、経営者の「覚悟」から始まる
人手不足問題は、もはや人事部だけの課題ではありません。それは、「経営戦略の失敗」として厳しく捉えるべきです。
私が提唱するこの「人が辞めない仕組みの設計図」は、社員一人ひとりを会社の成長パートナーとして尊重し、そのキャリアと主体性に投資することで、外部環境に左右されない強靭な組織を構築します。

